車を手放した際、条件を満たせば自動車税の還付金を受け取れることをご存知でしょうか。しかし、いざ手続きを進めようとすると、自動車税還付金の受け取り方について、さまざまな疑問が浮かぶものです。例えば、還付金がいつ届くのか、手続きに必要な税還付通知書とは何か、万が一通知が来ない場合はどこへ問い合わせをすれば良いのか、といった点が挙げられます。また、銀行での受け取り方法や、代理人が手続きを行う場合に委任状は必要なのか、といった具体的な手順で悩む方もいらっしゃるでしょう。この記事では、還付金額の早見表にも触れながら、これらの疑問を一つひとつ丁寧に解説していきます。
- 還付金を受け取れる条件と具体的な金額
- 銀行窓口や口座振込での受け取り手順
- 通知書が届かないなどトラブル時の対処法
- 代理人が手続きする際の必要書類と注意点
基本的な自動車税還付金の受け取り方
- 還付金を受け取るための条件
- 還付金額がわかる計算方法と早見表
- 還付通知書はいつ届くのか?
- 税還付通知書が届いたら内容を確認
- 銀行の窓口で還付金を受け取る
- 口座振込を希望する場合の注意点
還付金を受け取るための条件

自動車税の還付金を受け取るためには、まず満たすべきいくつかの条件があります。これらの条件が揃っていなければ、還付の対象とはなりませんので、ご自身の状況と照らし合わせて確認することが大切です。
車の廃車手続きが完了していること
還付を受けるための大前提として、車の廃車手続きが完了している必要があります。廃車手続きには、「一時抹消登録」と「永久抹消登録」の2種類が存在します。
一時抹消登録は、海外転勤や長期入院などで一時的に車の使用を中止する際に行う手続きです。この手続きにより、登録されている期間中は自動車税の課税が停止されます。一方、永久抹消登録は、事故や老朽化などで車を解体処分する場合に行う手続きで、登録を完全に抹消します。
自動車税の還付は、これらの一時抹消登録、あるいは永久抹消登録のいずれかの手続きが運輸支局で完了していることが必須となります。単に中古車買取業者に車を売却したり、知人に譲渡したりしただけでは名義が変更されたに過ぎず、廃車手続きにはあたらないため還付の対象外です。
地方税をすべて納税していること
もう一つの重要な条件は、地方税を完全に納税していることです。自動車税は都道府県に納める地方税の一種ですが、還付を受けるためには、住民税や固定資産税といった他の地方税も含めて、一切の滞納がない状態でなければなりません。
もし地方税に未納分がある場合、発生した還付金は自動的にその滞納分に充当されることになります。そのため、滞納額が還付金額を上回っている場合は、手元にお金が戻ってくることはありません。したがって、廃車手続きを進める前に、ご自身に未納の地方税がないかを確認しておくことが肝心です。
還付金額がわかる計算方法と早見表

自動車税の還付金額は、ご自身で計算しておおよその額を把握することが可能です。還付金額は、廃車手続きを完了した月によって変動するため、計算方法を知っておくと良いでしょう。
還付金額の算出方法は、以下の計算式に基づいています。
1年分の自動車税額 ÷ 12ヶ月 × 抹消登録した翌月から3月までの月数 = 還付金額
ここで注意すべき点は、計算結果の100円未満は切り捨てられることです。また、計算の起点は抹消登録手続きが完了した月の「翌月」からとなります。例えば、8月1日に手続きをしても、8月31日に手続きをしても、還付の対象となるのは9月分から3月分までの7ヶ月間であり、還付金額は同額です。しかし、手続きが1日でも遅れて9月になってしまうと、対象月数が6ヶ月に減ってしまうため注意が必要です。
具体的な例で見てみましょう。2019年10月1日以降に新規登録した総排気量1,501cc~2,000ccの自家用乗用車(年税額36,000円)を、8月に抹消登録した場合の計算は以下のようになります。
36,000円 ÷ 12ヶ月 × 7ヶ月(9月~翌3月) = 21,000円
この場合、21,000円が還付されることになります。
自動車税還付額 早見表(2019年10月1日以降登録の自家用車の場合)
以下に、抹消登録月別の還付金額の早見表を記載します。ご自身の車の排気量と照らし合わせて参考にしてください。
総排気量 | 年税額 | 4月抹消 | 5月抹消 | 6月抹消 | 7月抹消 | 8月抹消 | 9月抹消 | 10月抹消 | 11月抹消 | 12月抹消 | 1月抹消 | 2月抹消 |
1,000cc以下 | 25,000円 | 22,900 | 20,800 | 18,700 | 16,600 | 14,500 | 12,500 | 10,400 | 8,300 | 6,200 | 4,100 | 2,000 |
~1,500cc | 30,500円 | 27,900 | 25,400 | 22,800 | 20,300 | 17,700 | 15,200 | 12,700 | 10,100 | 7,600 | 5,000 | 2,500 |
~2,000cc | 36,000円 | 33,000 | 30,000 | 27,000 | 24,000 | 21,000 | 18,000 | 15,000 | 12,000 | 9,000 | 6,000 | 3,000 |
~2,500cc | 43,500円 | 39,800 | 36,200 | 32,600 | 29,000 | 25,300 | 21,700 | 18,100 | 14,500 | 10,800 | 7,200 | 3,600 |
~3,000cc | 50,000円 | 45,800 | 41,600 | 37,500 | 33,300 | 29,100 | 25,000 | 20,800 | 16,600 | 12,500 | 8,300 | 4,100 |
※3月に抹消登録した場合、残り月数が0ヶ月となるため還付金はありません。
還付通知書はいつ届くのか?

廃車手続きを終えても、すぐに還付金が受け取れるわけではありません。まず、都道府県の税事務所から還付に関する通知書が郵送されてくるのを待つ必要があります。
この通知書が手元に届くまでの期間は、抹消登録の手続きが完了してからおよそ1ヶ月から2ヶ月後が目安となります。ただし、これはあくまで一般的な期間であり、手続きを行う自治体や時期によって多少前後することがあります。特に、年度末の2月や3月は運輸支局が混雑し、手続きに時間がかかる傾向があるため、通知書の到着も遅れる可能性が考えられます。
通知書は、車検証に登録されている所有者の住所(印鑑証明書の住所)へ送付されるのが基本です。もし廃車手続き後に引っ越しをした場合は、郵便局へ転送届を提出しておくなど、通知書を確実に受け取れるように手配しておくと安心です。
税還付通知書が届いたら内容を確認

抹消登録後1〜2ヶ月ほどで、自治体から「送金支払通知書」や「振替払出証書」、「過誤納金等還付通知書」といった名称の書類が届きます。これが自動車税の還付を知らせる公的な通知書です。名称は自治体によって異なりますが、いずれも還付金を受け取るために不可欠な書類となります。
この通知書が手元に届いたら、まず記載されている内容に誤りがないかをしっかりと確認しましょう。特に確認すべき点は以下の通りです。
- 還付を受ける権利者の氏名・住所
- 還付される金額
- 受け取り場所として指定されている金融機関名
- 通知書に記載されている有効期限
氏名や金額に心当たりがない、あるいは誤りがあると感じた場合は、速やかに通知書に記載されている問い合わせ先の税事務所へ連絡する必要があります。また、この通知書には通常1年程度の有効期限が設けられています。期限を過ぎてしまうと、金融機関の窓口で手続きができなくなるため、受け取ったら早めに行動することが求められます。
銀行の窓口で還付金を受け取る

還付通知書の内容を確認したら、いよいよ還付金を受け取る手続きに進みます。最も一般的な受け取り方法は、通知書に指定された金融機関の窓口へ直接出向く方法です。
受け取り手続きの際には、以下の3点を持参する必要があります。
- 郵送された還付通知書(送金支払通知書など)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど顔写真付きのもの)
- 印鑑(認印で構いませんが、シャチハタは不可の場合があります)
これらの必要書類を窓口に提出し、備え付けの書類に必要事項を記入・押印すれば、その場で現金にて還付金を受け取ることができます。
なお、自治体によっては銀行だけでなく、ゆうちょ銀行(郵便局)の窓口で受け取れる場合もあります。その場合は「振替払出証書」という名称の通知書が届くことが多く、手続きの流れは銀行とほぼ同じです。どの金融機関が指定されているかは、必ず通知書で確認してください。
口座振込を希望する場合の注意点

窓口へ出向く時間がない方のために、多くの自治体では口座振込による受け取り方法も用意されています。口座振込を希望する場合は、廃車手続き(抹消登録)を行う際に、運輸支局に併設されている税事務所で「自動車税還付金口座振込依頼書」といった書類を提出するのが一般的です。
ただし、この方法を選択する際にはいくつかの注意点があります。まず、すべての金融機関が振込先として指定できるわけではないことです。特に、インターネット専業銀行など一部の銀行は対象外となる場合があります。
また、都道府県によっては、還付金額の大きさによって受け取り方法を指定しているところもあります。高額な還付の場合は、安全性の観点から口座振込しか対応していないケースや、逆に少額の場合は窓口受け取りのみとしているケースも考えられます。
口座振込が可能かどうか、また手続き方法の詳細は、自治体によってルールが異なります。そのため、口座振込での受け取りを検討している場合は、事前に管轄の都道府県の自動車税事務所へ問い合わせて、対応の可否や具体的な手順を確認しておくとスムーズです。
自動車税還付金の受け取り方に関する注意点
- 還付通知書が来ない場合の対処法
- 困ったときの問い合わせ先について
- 代理人による還付金の受け取り
- 代理人申請で必要になる委任状
- 総まとめ:自動車税還付金の受け取り方
還付通知書が来ない場合の対処法

抹消登録から2ヶ月以上経過しても還付通知書が届かない場合、何らかの問題が発生している可能性があります。その際は、慌てずに以下の点を確認してみましょう。
まず考えられるのは、住所の変更です。前述の通り、通知書は車検証に記載されている所有者の住所(印鑑証明書の住所)に送られます。抹消登録手続きの前後に引っ越しをした場合、旧住所に通知書が送られてしまい、受け取れていないケースが少なくありません。郵便局に転居届を出していない場合は、これが原因である可能性が高いです。
次に、そもそも還付の条件を満たしていないケースも考えられます。例えば、気づかないうちに他の地方税を滞納しており、還付金がそちらに充当されてしまった場合などです。
これらの点に心当たりがない場合は、次のステップとして管轄の税事務所へ問い合わせることになります。なお、還付金を受け取る権利には時効があることにも注意が必要です。還付の権利が発生してから5年間が経過すると、時効により権利が消滅してしまいます。通知書が届かないまま長期間放置することのないよう、早めに対応することが大切です。
困ったときの問い合わせ先について

還付通知書が届かない、内容に不明な点がある、紛失してしまったなど、自動車税の還付に関して何らかのトラブルや疑問が生じた場合の問い合わせ先は、お住まいの地域を管轄する都道府県の税事務所(または自動車税事務所、県税事務所など)になります。
運輸支局で廃車手続きを行った際に、併設されている税事務所で手続きをしているはずですので、基本的にはその事務所が担当窓口となります。どの事務所に連絡すればよいかわからない場合は、お住まいの都道府県の公式ウェブサイトで「自動車税」に関するページを探すか、「(都道府県名) 自動車税 問い合わせ」といったキーワードで検索すると、担当部署の連絡先を見つけることができます。
問い合わせをする際には、スムーズに照会が進むよう、手元に車の登録番号(ナンバープレートの番号)や車台番号がわかる書類(車検証のコピーなど)を準備しておくと良いでしょう。電話で本人確認を求められることもあるため、落ち着いて対応できるように準備しておくことが望ましいです。
代理人による還付金の受け取り

還付金は、原則として納税義務者である車の所有者本人が受け取るものです。しかし、所有者が高齢である、病気で入院している、海外にいるなど、やむを得ない事情で本人が金融機関の窓口へ行けない場合もあるでしょう。
このような状況に対応するため、代理人による受け取りも認められています。家族や信頼できる知人に手続きを依頼することが可能です。ただし、誰でも自由に代理人になれるわけではなく、正式な手続きを踏む必要があります。
代理人が手続きを行う場合、最も重要になるのが「委任状」です。これは、納税義務者本人が「代理人に還付金の受領に関する権限を委任します」という意思を公的に示すための書類です。この委任状がなければ、たとえ家族であっても金融機関は手続きを受け付けてくれません。不正な受領を防ぐための重要な措置ですので、必ず準備が必要です。
代理人申請で必要になる委任状

代理人が還付金を受け取る際に不可欠な委任状ですが、この書類に加えて、他にも準備が必要なものがあります。自治体によって細かな規定は異なりますが、一般的に以下のものが必要とされます。
代理人申請で一般的に必要なもの
- 委任状:納税義務者本人が署名・押印したもの。実印での押印を求められることが多いです。
- 納税義務者本人の印鑑証明書:委任状に押された印鑑が実印であることを証明するために必要です。通常、発行から3ヶ月以内のものが有効です。
- 還付通知書:郵送されてきた原本。
- 代理人の本人確認書類:代理人自身の運転免許証やマイナンバーカードなど。
- 代理人の印鑑:手続き書類への押印のために必要です。
委任状の書式は、各都道府県の税事務所のウェブサイトからダウンロードできる場合が多いです。所定の様式がない場合は、必要な記載事項(委任者と受任者の氏名・住所、委任する内容、日付など)を盛り込んで自作することも可能ですが、不備を防ぐためにも、事前に管轄の税事務所へ書式や必要書類について確認しておくのが最も確実な方法です。準備に手間がかかるため、代理人申請を検討する際は、早めに動き出すことが肝心です。
総まとめ:自動車税還付金の受け取り方
この記事では、自動車税の還付金を受け取るための様々な情報について解説してきました。最後に、今回の内容の要点を箇条書きでまとめます。
- 自動車税の還付は廃車手続きが前提となる
- 一時抹消登録と永久抹消登録のどちらでも対象
- 地方税をすべて納税していることが条件
- 還付金額は月割りで計算され100円未満は切り捨て
- 3月に廃車手続きをすると還付金は発生しない
- 軽自動車には自動車税の還付制度はない
- 抹消登録から約1〜2ヶ月後に還付通知書が届く
- 受け取りは指定金融機関の窓口か口座振込が基本
- 窓口では通知書・身分証明書・印鑑が必要
- 通知書が届かない場合はまず住所変更を確認
- 5年で還付金を受け取る権利は時効となる
- 困った際の問い合わせ先は管轄の都道府県税事務所
- 代理人が受け取る場合は委任状が求められる
- 委任状の書式や必要書類は自治体で異なる
- 手続きのタイミングが遅れるほど還付額は減る
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